こんにちは!ポケット人事編集部です。
今回は改正労働基準法に準じた残業手当の支給方法についてお話していきます。
残業代はきちんと払いましょう
・残業代はきちんと払いましょう。
・制度施行後は今までよりも沢山払いましょう。
という話は、色々な場面でお耳にする話だと思います。
この言葉を聞いて皆さんはどのようにお感じになるでしょうか?
・今でもギリギリでやっているのにこれ以上払えなんて無理。
・成果も出さないで時間ばっかりかかっているのに、何で残業代まで払う必要があるの?
・勝手に残業している業務に対してまで、残業代を支払っていたら、キリがない。
・営業手当以外に更に残業代をまだ払わなければいけないの?
などいろいろと思うところがあるのではないでしょうか。
皆さんがお感じになっていることはどれも、多くの工務店様も共通認識としてお感じになっていることです。実際に私がお伺いしている工務店の社長様からは、「どうなっているの? もっと払わなければならないの?」などと、上記のような内容のお話が多く聞かれます。
「最悪逮捕・書類送検」こんなに怖い残業代の未払い
おっしゃるところは全てごもっともな意見だと思います。
ただし、「皆も言っているから良いだろう」では法律には対抗できません。
残業代の恐ろしさをもう一度復習すると以下のような項目が挙げられます。
①過去(2年分)の残業代未払い分があれば、一度に支払いをしなければならない。
②指摘後は適正な残業代を支払っていかねばならなくなる。
③事故による損害と異なり残業代未払い分や残業代には保険がなく、全額自社負担である。
④指導に従わないと、事業主を逮捕・書類送検することさえある。
このような事態になってからでは、会社を守ることは出来ません。
そうならない為の備えとして、残業代の算出方法の一例をご紹介します。
基本的な残業代の構築方法
営業手当を「固定残業代」として取り扱っている会社も少なくないと思います。
しかし、その「固定残業代」を従業者の皆さんはしっかりと理解しているでしょうか?
通常の残業代に置き換えた時にその手当が法律の定める規程の額に満たない場合は未払い残業代が発生している状態となっています。
そうなってしまえば、上記の4つのリスクが降りかかってきます。
そんな状態にならない為の「固定残業代」の設定の仕方を学び、実践していざという時の為に備えて下さい。
固定残業代の算出方法
(例)基本給:250,000円 営業手当:50,000円 役職手当:30,000円
労働時間:170 h/月 残業時間:50 h/月 このケースの場合
基本給額から残業時給を算出し、そこから本来支払うべき残業代を算出する
時 給 = 基本給:250,000円 ÷ 労働時間:170 h/月 =1470円
残業時給 = 1470円 × 1.25 =1838円
残 業 代 = 1838円 × 残業時間:50 h/月 =73,520円
営業手当と役職手当の合計額を「固定残業代」として記載する
基本給:250,000円 職務能力手当(固定残業代):80,000円
職務能力手当と残業代を比較すると
職務能力手当(固定残業代):80,000円 > 残業代:73,520円
となり、法律上支払うべきとされている額よりも多く支払っていることになる為、新たに残業代を請求されることはありません。
このように、今まで営業手当・役職手当として支給していたものを職務能力手当(固定残業代)とすることで、本人への実支給額への変化はありませんが、労働基準法に遵守した給与の支給を実現することが出来る訳です。
※想定残業時間を超えた部分については残業代を支払う必要が生じます。
更に、これでは6,480円分余計に残業代を支払うことになっているじゃないか。
と思った方もいらっしゃると思いますが、その点は「残業代の繰越し清算」という仕組みを使うことで、年間を通して見ると一定水準を保つことが出来ます。このあたりまでお話してしまうと難しくなってくるので、詳しくは調べてみてください。
残業支払いを正しく知り、自社の状況にあった人事制度構築を
今回ご紹介した方法は残業代リスクに対応する為の一例ですが、各社ごとに対応すべきケースは大きく異なります。
人事制度の構築をお考えの際には、世の中に出回っている制度やモデルケースに自社を当てはめるのでは、リスクの回避を出来ないケースも多々ありますので、人事制度構築の際には自社の状況にあった制度構築を行って下さい。
人事制度の構築はこれからの社会では人間で言う保険と同じです。
いつ自分の身に降りかかるか分かりませんから、準備を始めるのに早すぎる事はありません。
いざ事故に合ったときのために保険に入っておくのと同じように、いざ労務トラブルに発展してしまったときのために人事制度を整えておきましょう。